Interview vol.3 小岩 秀太郎/(公社)全日本郷土芸能協会常務理事・郷土芸能「鹿踊(ししおどり)」伝承者


次世代がリアルに求めるフィジカルな体験感覚。


震災からの復興を目指す中で芽生えつつあったジャンルを越境した交流が遮断されるというのは、本当に残念なことでした。一方で、オンラインツールを通したコミュニケーションによって、Z世代ともつながりやすくなったこともあったかと思うのですが、彼らの地域芸能や踊りに関する関心はどんな感じですか?

 デジタルデザイン会社『WOW』と “BAKERU”というプロジェクトで学校公演へ行った時のことです。CGを使ったクリエイションとは対極にある人間がリアルでかたち作る私たちの鹿踊と、東北のお祭りや芸能をデジタルアート化した作品を比較して観せるという実験をしたんです。
 「どちらも表現する素材は同じで、人間が作ったものであり、伝えたいことがあるから作っているんだよ」と話すと、子供たちは「デジタルも面白いけど、生モノ(リアル)もめちゃ面白い!」と。特にこのコロナ禍では、実際に体を動かしたり人と接触できないなど、何かに積極的に接することがままならなかっただけに、子供達やZ世代は直に触ったり音を聞いたりダンスを見たり、リアルに教えてもらうということを相当渇望していると感じました。そういう意味では、郷土芸能を生で見せるのも捨てたもんじゃないなと思えましたね。

強制的なリモートを経て、再び生の舞台が求められていく時代が来つつありますよね。

 これまで子供も大人も勝手に伝統的な民族や郷土芸能に対して、「こういうもの」という固執したメージやくくり、あるいは「古いもの」として継承の大切さを強調しすぎて、「ちゃんと見て、正しく知ろうね」と押しつけてきたきらいがあると思うんです。今はそのイメージを一旦取っ払って、直に話をしたり体験させるという機会が大切じゃないかな。

そうした機会を地方の芸術祭やフェスティバルがつくり、それにより郷土芸能がアートやダンスとアクセスしていくきっかけにもなっているのでは? 

 三陸国際芸術祭は、これまでの地方芸術祭のようにモニュメントなど有形の作品を持ち込んだり制作するのではなく、民俗芸能とパフォーミングアーツといった無形のプログラムを中心に据えた一風変わった芸術祭です。

 もともと東北には郷土芸能が各地域にたくさんあったので、他所から来たアーティストが注目し、新たな魅力として捉えることで、地域の人たちがさらに昇華させ、発見を引き出していく機会が生まれていった。一緒に考え、新しいものを創造していくというアートに、触れて体験できる土壌が育まれつつあります。

郷土芸能とコンテンポラリーダンスとの融合はあり得ると思いますか? 

 例えば鹿踊の長—いささらや鹿角など、当時なぜこんなものを作ったんだろうという根源を考えると、そこにコンテンポラリーダンスそのものを感じますよね。
 創造というものは、自分の中からだけで生まれてくるものではなく、何かしらとの接触や影響によって発し、それを自分の体に落とし込んで体現させていくもの。だとしたら、民俗芸能の発端もやっぱり何かのためにやるべきと考えたひとつの表現が、ダンスや踊りになっていったのではないかと思うんです。
 コンテンポラリーダンスと郷土芸能に関わる皆さんが、互いに議論をしていく機会があれば、それぞれに踊ることの意味合いや根源を見つめ直すこともできるので、積極的に関わり合っていってほしいですね。

Next『東京鹿踊』を通してつなぎたい、森羅万象の未来。

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